「私にもしものことがあったら、この積立、どうなるんだろう」
ふと、そんなことが頭をよぎったことはありませんか。
縁起でもない、と思われるかもしれません。でも、家族のためにコツコツ積み立てているお金だからこそ、家族にちゃんと届くのかは、いちばん大切なことのはずです。
私は銀行員時代、相続のお手続きをたくさん担当してきました。その経験から先にお伝えすると
NISAの資産は、消えません。ちゃんとご家族に引き継がれます。
ただ、いくつか「知らないと戸惑うルール」があるのも事実。今日は、もしものときにNISAがどうなるかを、やさしく整理しておきましょう。読み終わる頃には、「じゃあ、今日これだけやっておこう」がわかります。
大前提:資産は消えず、家族のものになります
NISAの箱の中にある投資信託や株は、預金と同じ相続財産です。亡くなったからといって消えたり、国に取られたりすることはありません。
手続きを経て、ご家族(相続人)の口座に移され、ご家族のものになります。
ここは、安心してくださいね。
そのうえで、知っておきたいルールが3つあります。
ルール①:「税金ゼロの箱」は、亡くなった日に閉じる
新NISAの記事で、NISAは「増えても税金がかからない箱」とお話ししました。
この箱の効果は、亡くなった日まで続きます。
つまり、積み立て始めてから亡くなった日までの値上がり分には、税金がいっさいかかりません。ここは箱の力が最後まで働いてくれます。
そして家族が引き継ぐときは、亡くなった日の値段で買ったことにして引き継ぎます。
たとえば、100万円で積み立てたものが、亡くなった日に150万円になっていたら、増えた50万円は非課税のまま、ご家族は「150万円で買った」扱いでスタートする、というイメージです。その後にさらに値上がりした分だけが、ご家族側で課税の対象になります。
ルール②:家族のNISA箱には、入れられない
ここが、いちばん意外に思われるところです。
引き継いだ投資信託や株は、ご家族自身のNISA口座には入れられません。移す先は、普通の課税口座(特定口座など)です。
「箱」は一人にひとつ、その人専用。中身は渡せても、箱ごとは渡せない。そんなイメージです。
だからご家族は、引き継いだあとに「このまま持ち続けるか」「売って現金にするか」を、あらためて選ぶことになります。どちらを選んでも大丈夫。故人の口座がある証券会社で手続きすれば、選べるようになっています。
ルール③:相続税の対象には、なります
もうひとつ、よくある誤解を解いておきましょう。
NISAが非課税なのは、値上がり益や配当にかかる税金(約20%のあれ)です。
相続税は、別の話。NISAの中の資産も、預金や家と同じように相続財産として数えられ、相続税の計算に含まれます。
「NISAなら相続税もかからない」ではない。ここだけ、覚えておいてくださいね。
(ただし相続税には大きな基礎控除があり、そもそも相続税がかからないご家庭も多くあります。心配な場合は税理士さんなど専門家にご相談を)
手続きは、ざっくりこの流れ
ご家族がすることを、ざっくりつかんでおきましょう。細かい書類は証券会社が案内してくれるので、流れだけで十分です。
- 証券会社に連絡する(「口座の名義人が亡くなった」と伝えると、死亡の届出書類一式が送られてきます)
- 必要書類をそろえる(戸籍謄本など。証券会社の案内どおりに)
- 引き継ぐ人の口座に移す(原則、同じ証券会社に相続人の口座が必要です。なければ開設します)
銀行の窓口で相続を担当していて感じたのは、手続きそのものより、「どこに何があるか、家族が知らない」ことがいちばんの壁だということでした。
口座の存在をご家族が知らなければ、探すところから始まります。これが本当に大変で、時間も心の負担も大きいんです。
今日できる、いちばんの備え
だから、この記事でお伝えしたい行動は、たったひとつです。
「NISAをやっている」と、家族に伝えておくこと。
難しいことは要りません。メモ1枚で十分です。
- 証券会社の名前(例:楽天証券)
- 「NISAで積立をしている」ということ
- 困ったときの連絡先(証券会社のカスタマーセンター)
これをエンディングノートや、家族がわかる場所に書いておく。パスワードまで書く必要はありません(むしろ書かないでください)。「存在」さえ伝われば、手続きは必ず進められます。
わが家のお金の全体像を整理する意味でも、3つのお金の仕分けのメモと一緒にしておくのがおすすめです。
まとめ
- NISAの資産は消えない。ちゃんと家族に引き継がれる
- 非課税の効果は亡くなった日まで。それまでの値上がりに税金はかからず、家族は「亡くなった日の値段で買った」扱いで引き継ぐ
- 家族のNISA口座には入れられず、課税口座へ。箱は一人にひとつ、渡せるのは中身だけ
- 相続税は別の話。NISAの資産も相続財産に含まれる
- 今日できるいちばんの備えは、「やっている」と家族に伝えるメモ1枚
もしもの話は、考えるだけで少し胸がざわつきますよね。
でも、備えができた分だけ、積立は「家族への贈りもの」に近づきます。メモを1枚書いたら、あとはまた、いつもどおりコツコツ続けるだけ。だいじょうぶですよ。
→ 出口のルールもあわせて:新NISAの売却ルールをやさしく解説
※ 本記事は特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。相続の手続き・税金は個別の状況によって異なります。具体的な判断は、証券会社・税理士等の専門家にご確認ください。
※ 制度・税金に関する記述は2026年7月時点の情報です。最新の情報は金融庁「新しいNISA」のページ(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/)等でご確認ください。